迷子


親父は世界地図を開く。
「なんも街とか書いてへんな。とにかく道に出るんやろ」
河を遡って進んでいくが、敵が強い! 
夜に上陸したせいもあるんだろうが、半端なく強い!
進む途中で『破壊神だんきち』が左手の方に居たが、親父は気付かず通り過ぎる。
グール4匹、パペットマン2匹と遭遇。
「あかん、強い。死なへん」と呟く。
通常戦闘なのに、ルーンスタッフ、バイキルトを使いまくりだ。
「なんか、これはいくらなんでも敵が強すぎる気がする……」
戦闘を終えて回復もし終わったあと、
「どうしょうかな……」
そう言ったところで、背後からだんきちが突然画面に!! 俺の方が百倍ビビッた。
だんきちはいきなり襲いかかって来る。
「なんやねん!」
「そいつ強いから、逃げた方がいい。逃げられるはずや、そいつからは」
「無理やろ、こいつからは逃げられへんぞ。
いきなり攻撃してきたからな」

親父はそう言って、『たたかう』を選ぶ。
だんきちはバイキルトを使い、自らを強化。こっちのダメージは100越えだ。
ヘロヘロになりながらも、辛くも勝利する。
格闘場の事を言おうかと思ったが、親父はそれどころじゃないようだ。
俺は
「姿が見えとる敵は、一度倒しても何度でも復活するからな。
戦いたくなかったら、姿が見えたら避けるようにするこっちゃ」
とだけ説明。

「なんやねんこの大陸は……おかしいぞこれは。
でも、街まで着きたいしなぁ」
何歩か進んだところで、あやしいカゲ4匹と遭遇。
「そいつにはテンションをためた方がええで」と俺。
しかし親父には聞こえてないようだ。
「強い、強い」と嘆いている。
一匹倒しては仲間を呼ばれ、キリが無い。
「だから、テンションためろってば」
「あかんねん、強いからあかんねん。きっと逃げられへんし」
んもう、いい加減人の話聞けよ! ゲームの中に入り込みすぎだ。
俺は半ば呆れ気味にトイレに行き、自室に引っ込んでいた猫を捕まえて居間に戻る。
「あのな、わし、もうこいつと15分は戦っとるわ……」
ドン・モグーラより、大量のあやしいカゲの方が強いということが判明した。
よくよく見れば、『あやしいカゲP』まで出現している。
「うわー、Pまで出とるぞ」と俺。画面上は5匹のものの、Pが居る。
P?」
「あやしいカゲABCDから始まって、Pまで仲間呼ばれたってことや」
親父は指折り数える。
16匹!?」 俺はニヤニヤ。もう助けてあげてもいいかな。
「よかったら倒したろか? ここまで倒して逃げるの嫌やろ」
「ほんまに倒せるんかいな。まぁええわ。お前やってみ」
テンション上げて、オノむそうでやっつけた。
「だからテンションためろって最初に言うたやろ?」 コントローラーを渡す。
「むぅ……」
経験値は、1200ちょい獲得した。
「えらい目におうたわ。MPもあらへんがな。
この道は間違いや! 一回戻って出直すで」


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