スライム丘〜三角谷上空


川沿いの教会から再開。
と書いたものの、最初の小一時間ほど、俺は見てない。
親父用の年賀状つくるのを頼まれたからだ。
「お前がやってる間、わしは空を飛び回っとくからな!」だと。
印刷の合間合間に覗きに行くと、宣言通り空を飛んでいた。
「何か見つかった?」と俺。
「ゲルダの家に行ったで。小さなメダルがあった。
でもあかんねん、どこも行ったことある街ばっかりや」

ようやく俺は印刷を終えて、親父に渡す。
「お前、宛名の文字がでかいんじゃ! アホ!!」
試し刷りの時は何も言わなかったじゃないかよ。
俺はぶち切れそうになったが、こらえていつもの場所に腰を下ろす。
画面を見ると、親父は何とスライム丘にいた。
まだ来たばかりだと言う。
「降りられそうやったから降りてみたんや」
俺は地図を出させて、少し説明する。
★印になってるやろ。鳥でないと来られへん所の印や」
「じゃあ、おうとるんか!」
「それはどうかは知らんが、
とにかく、鳥オンリーの場所におることは確かや」

親父はスライム丘を進んで行く。
橋を渡り、いくつか穴を抜ける。
「スライムばっかり出てくるな、ここ。
なんでトヘロスかけてんのに出てくるんやろ」
それは実はね、と言おうとした所ではぐれメタル4匹と遭遇。
「うわ! すごいぞ!」
「ここはそういう場所や」
「ホンマか! お前ここすぐ来たか?
わしすごいぞ、一発目がコレや!」
俺が居ない間、本当に街ばかり回ってたのね。
4匹中、1匹は倒すことに成功した。
途中でメタルスライムの大群にも遭遇。3匹ほど倒せた。
奥では覇王の斧を入手。
「こんだけやなぁ。お前ここ覚えといてや。また来るから」

再び空から地上を探索。
街や城を見つける度に、
「ここはわし行ったか?」と繰り返す。
俺はその度に地名を言ってあげる。
「あかんなぁ、全部行ってるなぁ」
やがてサヴェッラの辺りに辿り着く。
「ここは!?」
「そこはサヴェッラや」
「あっ、ここちゃうんか! ここは行ってないやろ!」
大岩の事だ。そうやね、と答える。
「よし、降りるで!」

法皇の館に降り立つ。
入ろうとすると、誰かが来るので隠れる。
マルチェロと法皇の会話を聞く。
「こんだけ?」
中を歩き回ってみるが、途中で夜になる。
法皇にも会わないまま、親父はここの探索は保留とした。
「困ったなぁ。どこに行ったらええか全然分からん」
「鳥でないと行かれへん所や」
「それは分かっとるわい。でも空から見たら、
どれがどの街やとかわしは全然分からへんもん」
俺も困った。どういう風にヒント言ってやろうか。

親父は空から世界を回る。
トラペッタ、ポルトリンク、アスカンタ、ドニ……。
俺が地名を言う度に、
「あかんなぁ」と。
ドニの辺りをぐるぐるしている。
「高い場所なんやろうな、多分。さっきもそうやったし」
「高い場所でも、降りられる所と無理な所があるからな」
ちょうど岩山上空を飛んでいたので説明する。
「これも、降りられそうな場所やけど、
影の表示は無理って表示になってるやろ」
「分かっとうって、わしずっと飛んでたんやから」
なのに小一時間飛んで発見したのがスライム丘だけなのか。
「分かってるねん。だからな……ホラ、
こういうとことか怪しいんや。降りられるってなってるやろ、ここ」
そこは三角谷上空。俺はもどかしくて困る。
「降りたかったら降りてみたらええやんか」
「いっぺん降りたら、また呼ぶまでが長いからイヤやねん」
そこで降りてくれ。俺は黙って祈る。
「お前が言うんやったら降りたるか」 よし!


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